野球食 Food for Baseball Players
本ページはベースボールマガジン社発行
海老久美子著「野球食」から抜粋した内容を掲載しています。
【2回裏1/5】  野球選手はやせちゃダメ!脂肪を落とすカギは筋肉にあり

■筋肉を落とすと太りやすくなるのだ

「デカくなりたい」「体重を増やしたい」という選手が多い中、小数派ではあるものの「自分はやせたい」と思っている選手もいる。
周りに細い選手が多いから、ちょっと 「ぽっちゃり」していたりすると目立つらしい。

「なんで自分だけ」 っていう気持ちはわかるけど、野球選手にとって、太れることは悪いことばかりじやない。内臓が弱く、吸収能力が低くては太ることもできない。
嫌味じゃなくて本当にうらやましいと思っている選手、多いはず。

 野球はかなりの筋肉量が必要なスポーツだ。
でも、その筋肉のつけ方がボディービルダーとは違うから、一見マッチョに見えない。
胸の回りに山盛りの筋肉がついてたら、いかにもバットが振れなさそうでしょ。
ピッチャーだって腕を強く振れなさそうでしょ。野球には野球の筋肉がある。

 同じ容量なら脂肪より筋肉のほうが重いから、選手の体重は見た目より多くなる。
いい野球選手はずっしり重いのだ。
「ぽっちゃり」を気にする選手が体重を落とすことに気を取られすぎると、この大切な筋肉までも失ってしまうことになりかねない。これがくせ者。

 活性組織である筋肉が落ちてしまうと、体は代謝量が落ちる。消費エネルギーが減る。ちょっと食べすぎると脂肪がつく。一度落とした節肉はなかなか戻らない。

結果、ますます太りやすい体になってしまうのだ。

「体重は落ちたけど体力も落ちて、見た目はますますぽちゃぽちゃしてきちゃった」 では、目も当てられない。
野球選手はむやみにやせることを考えるのは危険なのだ。

 プロの選手でも、小柄だったり、スマートに見えてもついているところにはちゃんとついているのだ。だから、ユニフォームが似合う。




【2回裏2/5】  野球選手はやせちゃダメ!脂肪を落とすカギは筋肉にあり

■筋肉をつけることが脂肪を落とすことになるのだ

 いうまでもなく、落とすべきは体重ではなく 「ぽちゃぽちゃ」 の脂肪なのだ。
体重計の数字より、体脂肪計の数字を気にしよう。脂肪を落とすために、今よりもっと筋肉をつけることだ。

 太りやすい選手の多くは、内蔵が丈夫で、食べたものを身につける能力が高い。だから、脂肪になりにくく筋肉をつけるための食べ物を選び、しっかりとしたトレーニングメニューを組み込めば、「ぽちゃぽちゃ」を「がっちり」にするのはそう難しいことではない。

 ポイントはトレーニング。

脂肪を落とすためのプログラムと筋肉をつけるためのプログラムを、それぞれしっかり自分で理解して実行しよう。食べ物を減らして脂肪だけを落とすのは無理なのだ。
一緒に筋肉までも落としてしまう。

だから、脂肪を落とすには、トレーニングと食事を一緒に計画的に考えることが大事になる。

 持に成長期に無理に食事を減らしたりしたら、身長などの他の体の成長にも支障をきたす恐れがあるのだ。野球をしながら、脂肪はなるべくつけずに、成長できるだけの食事量はしっかり確保しなくちゃいけない。




【2回裏3/5】  野球選手はやせちゃダメ!脂肪を落とすカギは筋肉にあり

■脂肪を落とし、筋肉をつけるための食事5力条

 トレーニングは専門書にゆずるとして、毎日の食事の部分ではどうすれば 脂肪を落とし、筋肉をつけることができるのか、具体的な方法を伝授しよう

@水分をしっかり取る
 詳しくは3回表で説明するけど、「水と油」というように、水は飲んでも脂肪 にはならない。体液の循環をよくして、代謝を高めるためにも水分はできる だけこまめに取ろう。ただし、運動途中やその前後以外、スポーツドリンク も含めて糖分の入った飲み物はやめておこう。これらを水の代わりに飲む と、びっくりするほどの砂糖と同じだけの糖分を取ることになる。

 砂糖のような精製された糖分は吸収が早く、脂肪になりやすい。甘いか らおいしいというのは子供の味覚。ただでさえ、食事の調味料や、こっそり 食べてるお菓子の中に糖分は入り込んでいる。水分補給をする時は、水を 飲むと割りきって、ミネラルウォーターかお茶にしておこう。

A夜食厳禁
 食事自体をどうこうする前に、食事以外に食べているものに注目しよう。 中でも夕食後から寝る前に食べる夜食。これは厳禁。ルール違反と思って おこう。寝る前に食べる習慣は断ちきったほうがいい。深夜にターゲットとなりやす いのは、カップラーメン。簡単にできるし、皿も使わないからそこにあると食 べてしまいやすい。スーパーでは、カップ食品の安売りを目玉にしていたり するので、つい買ってしまったり、すでに買ってあったりするが、この予防に は非常用以外には買わないことだ。

 寝ている時は体は省エネ状態にしておこう。夜中に食べたものは脂肪に なりやすい。また、内臓だって眠りたいのに、寝る直前まで食べていたら、 その処理で内臓はずっと働かなくてはならない。これでは疲れがと れない。睡眠は、食べられる体作りのためのコンディショニングと考える。 夜は早めに熟睡できる態勢を整えよう。

 おなかがすきすぎて何か胃に入れないと眠れないという時は、温めたミ ルクやココアをゆっくり飲んで眠るといい。牛乳に入っているメラトニンキトリ プトファンという成分が、眠気を誘ってくれる。

B食物繊維をいっぱい取る
 ファイバーという横文字でコマーシャルでもいろいろ流れているから知ってるはず。食事の中に食物繊維がしっかり入っていると、かみごたえがあり、 早食いを防ぐ。それに、じつくりかめばその食べ物のおいしさを満喫できる.食物繊維は余分なものを吸着し体外に出してくれる「掃除当番」でもある。 ビタミンやミネラルのように有名ではないけど、いわば「守備固め」や「代打 の切り札」のように絶対に必要な存在なのだ。野菜、海藻、豆、乾物など、 食物繊維の多いものを食べて、おなかの調子を 整えよう。



【2回裏4/5】  野球選手はやせちゃダメ!脂肪を落とすカギは筋肉にあり

■脂肪を落とし、筋肉をつけるための食事5力条

Cタンパク質源を毎食、食べる
 毎食食べるというと大変なようだけど、選手が大好きな肉類に多く含まれている。筋肉の材料であるタンパク質を食べると、脂肪や糖質に比べ、体温が上がる。代謝が高まるのだ。

しかし、自然界に存在するタンパク質源となる食べ物は、どれも脂肪も一緒に含んでいる。
同じ肉でも脂肪の少ないところを選ぶとその分タンパク質が多いことを覚えておこう。わかりやすい例でいえば、カルビよりロースのほうが脂肪が少ないということだ。

タンパク質は一度に材料として使われる量は決まっていて、それ以上は脂肪になるから、一度に食べだめせずに、毎食に意識して入れるように心がけるといい。

D間食は足りないものを補うつもりで
 おやつ=お菓子という考えからは卒業しよう。
脂肪を落として筋肉をつけるにはお菓子はどうしても分が悪い。

9回表にカロリー表があるけど、例えばメロンパンは丼1杯分のごはんと同じカロリーがある。
でも、その中身は脂肪と砂糖が中心でごはんに含まれるタンパク質やミネラル、ビタミンはほとんど含まれない。お菓子を食べるなら、その種類と量を十分吟味したい。

 練習、試合の前後などの間食は悪いことではない。運動時間に合わせて、食事で取りきれなかったものは補って、しっかり練習やトレーニングに励もう。
練習やトレーニングで手を抜いていては、脂肪の燃えやすい体はできないのだから。

 体重が変わらなくても、脂肪が落ちて、筋肉がついてくると、まず顔つきが変わってくる。

体は厚みを増し、がっしりしながら、顔はひきしまり精悍な顔つきになってくる。
「ぽちゃぽちゃ」した男の子の顔が、大人の男の顔になってくるのだ。写真を引っぱり出して3〜4年前の自分の顔と今を見比べてみよう。

ユニフォームはさまになっているかな。
技術だけではなく、雰囲気もそれっぽくなってきたかな。

 アスリートの体と大人の顔をめざして、トレーニングと食べ方を改善してみよう。




【2回裏5/5】  野球選手はやせちゃダメ!脂肪を落とすカギは筋肉にあり

父母へ ■「脂肪の取りすぎを防ぐコツ」
脂肪の多い料理の代表といえば揚げ物。

でも同じ揚げ物でも調理の仕方で油の含有量は違ってくる。

まず、衣の多い揚げ物は、フライや天ぷらより唐揚げのほうが油を取る量は少なくてすむ。
また、同じフライでも、細かいパン粉を使うなどして、なるべく衣を薄くすることで油の取りすぎを防ぐことができる。

油の温度の管理と揚げたあとにしっかり油を切ることも大切。そして調味料。

何にでもマヨネーズをかける習慣は脂肪の取りすぎになりやすい。マヨネーズ好きの選手のサラダにはマヨネーズとドレッシングを半々に。マヨネーズだけだと全部食べることになるが、これだと液状になり、食ペ終わった器に残る。
トンカツのキャベツにはマヨネーズよりソースのほうが低脂肪。


指導者へ ■「Diet=やせることではない」
元来「Diet」とはやせることではない。「〜するための食事」という意味。

筋肉をつけたい」など、目的を持った食事はみんなダイエットなのだ。だから、食べないダイエットはありえないし、野球選手にとって「やせるダイエット」もありえない。

あくまでも脂肪を落とすことを目的にすること。中には体重が減ってくることに快感を感じ、無理をして筋肉量と体力までも落としてしまう選手もいるが、これは野球選手のダイエットとはいえないということを指導者からも指摘してほしい。

そのためにも体脂肪のチェックを定期的にできる環境を作っておくことが大切。
ウェイトトレーニングを行ないながらの脂肪燃焼は体重ではなかなか表れにくく、選手のやる気をそいでしまうことがあるからだ。




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