野球食 Food for Baseball Players
本ページはベースボールマガジン社発行
海老久美子著「野球食」から抜粋した内容を掲載しています。
【3回裏】  甘い飲み物を甘くみるな。市販飲料に含まれる糖分の真実

■ごはんと砂塘は何が違うの?

 ごはんは野球をするための大切なエネルギー源。しっかり食べたい。

でも同じ糖質を含むはずなのに砂糖は悪者にされやすい。なぜだろう?

 砂糖もごはんも糖質源であるのには変わりないけど、形が違う。
砂糖のほうがごはんに比べて甘みが強い。これは砂糖のほうが精製度が高く、吸収の早い純粋な糖分に近いことを意味する。

 もし、私たちの体が糖質だけを必要としているのならば、砂糖をいっぱい取るといいことになるけど、体にはその他にもたくさん必要な栄養素がある。そのバランスから考えると砂糖の取りすぎはやっぱりよくない。

 そして、砂糖は吸収が早く、血糖値をすぐに上げるから、食事の前に取ってしまうと食事量が抑えられてしまう場合もある。

また、味覚は慣れだから、砂糖のような強い甘さに慣れてしまうとそれが当たり前になって、常に甘みを求めるようになるということもある。

 でも、砂糖もその吸収のよさをうまく利用すれば優れた糖質の補給源。取りすぎだけを気をつければいいもので、決して悪者ではない。問題はその量だ。



【3回裏2/6】  甘い飲み物を甘くみるな。市販飲料に含まれる糖分の真実

■目に見えないところが怖いよね

 では砂糖としてはどのくらいまで取ってもいいのか?

目安としては料理に使う分も含めて1日50gまで。小さな角砂糖(3g)で17個くらいだ。
こう聞くと結構取れそうな気がするけど、料理で使う分を20gくらいとして、残り約30g(角砂糖10個)。これはコーラ1缶でオーバーしてしまう量なのだ。

 同じ量の砂糖をそのまま食べる人はあまりいないと思うけど、飲み物になっていると、意識なく簡単に飲めてしまう。この目に見えていないところがちょっと怖い。

 59ページ上の表※ は一般的な清涼飲料水の糖分を砂糖で換算したもの。それぞれかなりの量であることがわかるだろう。

市販清涼飲料水の糖分

ニアウォーターの糖分

※「野球食」59ページ掲載表


 野球ではよく「炭酸飲料は飲むな」と指導しているという話をよく聞く。
炭酸の入っていない飲料でも糖分は結構多い。が、比較してみると炭酸飲料は刺激が強く、一般的に炭酸の入っていない飲み物よりも糖分は多いようだ。
炭酸自体が悪いのではなく、糖分の取りすぎになりやすいところから 「炭酸はよくない」 といわれるようになったのかもしれない。

 同じく、ビタミンCや乳酸菌などで酸味が強い飲み物にも、糖分は多く添加されている場合が多い。健康飲料ということで安心して飲みすぎるとこれも糖分の取りすぎになる。

 また、紅茶やコーヒー飲料についても、自分で作って飲む時よりも糖分を取りやすいことを意識すること。「甘さ控えめ」が実際どの程度の糖分なのか、それぞれの糖分を確かめて選ぶようにしたい。

そしてスポーツドリンク。
スポーツドリンクは運動中とその前後、あるいは食事が十分にできない時の糖分とミネラル補給には有効な飲み物だが、水代わりに飲むには糖分が多すぎることも頭に入れておこう。



【3回裏3/6】  甘い飲み物を甘くみるな。市販飲料に含まれる糖分の真実

■500mlペットボトル1本、昔は「ホームサイズ」の量だった

 次に、ここ数年人気のペットボトル入り「ニアウォーター」 について。

「ニアウォーター」 は、500mlのペットボトルの発売が許可されてから種類が増えたもので、見た目は水に似た、透明度が高い飲料。

中にはビタミン・ミネラルを添加したり、甘味料を使ってカロリーを抑えたり、健康を意識したものも数多く売られている。

59ページ下の表に、その代表的なものを1本(500ml)飲んだ時の糖分量を上の表と同様に砂糖に換算してみた。

どうだろう? 水に近い色と飲み口から想像する以上の糖分量のものが多いのではないだろうか?
この糖分量の落とし穴は飲む量にある。100mlあたりの糖分量でみると、従来の飲料より少ないものがほとんど。でも350ml缶ではなく、これらは500mlペットボトル。
飲む量が増えれば、それだけ糖分量も増える。

 日本コカコーラボトラーズが初めてホームサイズのコカコーラを発売した時の量が、実は500ml。昔は家族4人で飲む量として売られていた量を今は一回に飲んでいるのだ(そういえば、缶も最初は250mlが主流だった〉。

 昔の子供はジュースやコーラも飲んだけど、足りない分は水や麦茶で補給していた。
でも今は一日中、ニアウォーターやスポーツドリンクやジュースで水分補給することもできてしまう。これでは、明らかに糖分の取りすぎ。
ごはんが十分に食べられないというのもうなずける。




【3回裏4/6】  甘い飲み物を甘くみるな。市販飲料に含まれる糖分の真実

■放み物の「履歴書」に注目しよう

 コンビニの天井まである冷蔵庫にズラリと陳列されている面々を見てもわかるように、一口に市販飲料といってもその種類はさまざまで、新旧交代も常に行なわれている。

 まずは、対戦相手のデータを集めるように、自分の飲んでいるものの正体を知ろう。

ちょっと細かい字になるけど、入れ物に書いてある文字をしっかり読み取ろう。これがその飲み物の履歴書だ。

 まず、原材料、賞味期限、そしてカロリー(エネルギー)などの栄養価。
栄養価については、その飲み物に特定の栄養についての表記がないと表示されていないこともある。ニアウォーターでは表示があるものが多いけど、コーラやジュースには表示のないものもある。
カロリー表示がないものは、一緒に書いてある「お客様相談センター」に問い合わせてみよう。

 また、表示されているカロリーは100mlあたりの表示が多いから、それを350mlなら3・5倍、500mlペットボトルなら5倍にしたものがその飲み物のカロリーだ。

 そのカロリーが全部糖分だったら(牛乳がいっぱい入っているものは、そのカロリーの一部がタンパク質や脂肪になる)、出たカロリー数を4で割ると(純粋な糖質は1gおよそ4kcalのため)だいたいの糖分量が割り出せる。

または、表示に糖質量(食物繊維を除く)があれば、それが糖分量。

そして、それをさらに3で割ると3gの角砂糖(または3g入りペットシユガーで何個分かを割り出すことができるのだ。気になる飲料はこの方法で計算してみよう。




【3回裏5/6】  甘い飲み物を甘くみるな。市販飲料に含まれる糖分の真実

■砂塘以外の塘分はノーカロリー?

「これに入っているのは果糖ぶどう糖液糖っていうので、砂糖じゃないからノーカロリーなの?」という質問を時々受ける。

そう、飲料に入っている甘味料は砂糖とは限らず、いろいろな甘味料が使われている。中にはこの質問のように砂糖以外はノーカロリーと勘違いしている選手も多いが、決してそうではない。

果糖ぶどう糖液糖はその名の通り、単糖類である果糖とぶどう糖の液糖。
果糖+ぶどう糖=砂糖だから、カロリーは砂糖と変わらない。

 新甘味料と呼ばれる糖アルコール類は腸からの吸収が悪いため、カロリーは砂糖の半分程度。これをたくさん取ると、選手によっては一時的におなかが張った感じがするのはこのため。

一方、ステビア、アスバルテームといった人工甘味料は、甘さが砂糖の100、200倍。
使う量が極微量となるのでほとんどノーカロリーに近い。最近はこれらを組み合わせて、カロリーを抑えている飲料が多いようだ。

砂糖を取りすぎないようにこれらの飲料を利用するのもひとつの方法かもしれないが、これでは甘いものを求める味覚は変わらない。

 考え方を変えよう。
甘みに対して敏感な味覚を作り「甘み離れ」をするためには、必要な場合以外は糖分の入っていない水やお茶で水分補給をするように心がけること。このほうが市販飲料に対する味覚も敏感になって、それぞれの本来のおいしさを楽しめるようになる。




【3回裏6/6】  甘い飲み物を甘くみるな。市販飲料に含まれる糖分の真実

父母へ ■「親の時代のホームサイズに戻そう」
昔500mlだったホームサイズの飲料は、今や1.5〜2Lのペットボトルになった。

これらの飲料を買い込む家庭も多いと思うが、選手のためには1.5〜2Lで買うのはお茶や水だけにしたい。中でも炭酸飲料は、一度キヤッフを開けると気が抜けるのが気になってつい飲みすぎる場合も多い。

特に年末年始の休みは食べる時間が十分にとれる時。
選手にとってはしっかり食べて増量できる大切なメンテナンス期。ここで食べるものを間違えると、ただ脂肪をつけてだらしなく太るだけになってしまう。
糖分の多い飲料はこの間違えを起こしやすいもの。飲みすぎには注意したい。

もし炭酸が欲しければ、メニュー集でも紹介したような無糖の炭酸を利用しての手作りドリンクを。糖分を半分以下にできる。


指導者へ ■「指導者も飲みすぎにご用心」

差し入れか何かで職員室や部室にスポーツドリンクが山積みになっているのをよく目にする。

本文に記した通り、スポーツドリンクはスポーツをする体の糖分とミネラルを補給するのに適した飲み物。体を動かしていない人が水代わりに飲むには糖分が高すぎる。

これは、指導者も例外ではない。
缶コーヒーとスポーツドリンクが昼間の水分補給の大半で、夜はビールと酎八イで水分補給、そして翌朝二日酔いの緩和にまたスポーツドリンク・・・これでは、かなりの糖分とアルコールを1日で取っている計算になる。

特に年末年始、忘年会や新年会の続く時期は要注意。
チームのためにも、選手のためにも、選手と一緒に、いやその前にこっそり、指導者自身の飲み物チェックをしておきたい。




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