野球食 Food for Baseball Players
本ページはベースボールマガジン社発行
海老久美子著「野球食」から抜粋した内容を掲載しています。
【4回裏1/4】  遠征ホテルの食事に浮かれちやいけない。朝食バイキング攻略法

■まずはメニューを把握するところからはじめる

 遠征や合宿でホテルを利用するチームも多いと思う。
その際、食事でよくあるのがバイキングスタイル。英語では通常ブッフェというが、各自が好きな料理を好きなだけ選択する食事のスタイルだ。

 特に朝ごはんは、このバイキングスタイルになることが多い。
大切なゲームや強化合宿の朝に何を選んで食べるかが、選手自身に任されるわけだ。

 ある野球選手に、朝のバイキングをどうやって選んでいるか尋ねたところ、
「並んでいる順番に嫌いなものを飛ばして取って、皿がいっぱいになったらそこで打ち止め」 との答えが返ってきた。

 まずは、どんなメニューがあるのか、きちんと把握するところからはじめよう。
敵を知らなければ攻略はありえないのだ。食堂では寝ぼけまなこで皿を取る前に、眠気覚ましに食堂を一周して何があるのかチェックしてみよう。そのうえで作戦を練っても食べ物は逃げない。

洋食スタイルのバイキングの取り方
 さて、その一例を具体的に考えるために、洋食スタイルのバイキングを取り上げてみた。
国内外を問わず、洋食スタイルはよく目にするが、一番気をつけたいのは、脂肪の取りすぎ。

脂肪を多く含む食べ物は、胃の通過時間が長くかかるため、朝一番に本番を控えている日には特に気をつけたい。同時に体脂肪分の気になる選手に脂肪分、糖分の取りすぎがよくないことは今さらいうまでもないだろう。

 この洋食バイキング、代表的なメニューを挙げてみる。



【4回裏2/4】  遠征ホテルの食事に浮かれちやいけない。朝食バイキング攻略法

■この洋食バイキング、代表的なメニューを挙げてみる。

●パン
 洋食の場合、このパンが炭水化物源の主役となるので、試合前にはしっかり食べておきたい。しかし、ごはんに比べどうしても脂肪が多くなりやすい。そこで、なるべく脂肪分を少なく、しっかり食べる方法を考えたい。
一般にはバターロール、フランスパン、食パン、クロワッサンなどが主流だろうか。
選手の一番人気はクロワッサンだが、かなりのバターを含んでいるため脂肪の取りすぎになりやすい。名前にバターがつかないからといって安心できない。

 クロワッサンに仕べ、バターロールやフランスパン、食パンは脂肪分が少ないだけ固くなりやすい。このパサパサ感を食べやすくするためには、ひとつの方法としてトースターで焼くといい。温めたパンは消化も早い。
もうひとつの方法は、サンドイッチにすること。ロールパンには手で切り込みを入れて、フランスパンはオープンサンドに、食パンは半分に切ってはさむように、卵、野菜、ハムなどのおかずを具にサンドイッチにする。具の水分がパサパサ感を補ってくれ、おいしく食べやすい。
パサパサしたパンはついバターやジャムの使いすぎになりやすい。

●卵料理
 ゆで卵、スクランブルエッグ、オムレツが主流。タンパク質の補給に卵は欠かせないが、ホテルのおいしいスクランブルエッグ、オムレツは結構バターが多いと思っていい。

取る量の目安は卵1個分(50gくらい)まで。もう少し卵が欲しい時にはゆで卵をひとつプラス、くらいに考えたほうがいいだろう。

 また、スクランブルエッグ、オムレツにケチャップをかけすぎる選手も多い。
バターで塩味はしっかりついているので、かけすぎは味のうえからいってももったいない。

●肉加工品
 ベーコン、ソーセージ、ハム。
一般にこの順番で脂肪分が多い。時に、ベーコンをてんこ盛りにしている選手を見かけるが、これでは運動前の体には脂肪分が多すぎる。
豚肉製品は、タンパク質、ビタミンB1の補給に望ましいが、ゲームや練習がすぐ控えている時にはハムを1、2校程度にしておくほうがいいだろう。

●サラダ
 最近はサラダバーのスタイルで野菜を出してくれるホテルも多くなった。海外では場所によっては、水の状態などから生野菜には注意が必要となるが、国内であれば、貴重なビタミン、ミネラル、食物繊維源であることはいうまでもない。

 トマト、サラダ菜、サニーレタス、かいわれ菜などの色の濃い生野菜やブロッコリー、にんじん、グリーンアスパラガスなどのゆでた緑黄色野菜を中心に、メイン皿とは別にサラダ用のボウルにしっかり取りたい。こと野菜に関してはてんこ盛りくらいでちょうどいい。

 また、サラダ菜などの葉モノはメイン皿にも取り、ハムやソーセージを巻いて食べたり、サンドイッチの具とするなど工夫してみよう。

 ドレッシングは好みのものを使っていいが、はじめからかけすぎないこと。こしょうをちょっとかけると少量のドレッシングでもおいしく食べられる。油の取りすぎを防ぐには、マヨネーズのようなクリームタイプのものよりも、しょうゆベース、イタリアンといったセパレートタイプのもののほうが、野菜にまとわりつきにくく、脂肪分をカットできるので無難だ。




【4回裏3/4】  遠征ホテルの食事に浮かれちやいけない。朝食バイキング攻略法

■この洋食バイキング、代表的なメニューを挙げてみる。

●ヨーグルト
一般に選手にはカップ入りのものは人気があるのだが、大きなボウルに入った甘みのないプレーンタイプのものはあまり人気がない。不足しがちなカルシウムを、乳酸菌の力を借りて吸収よく取るのに低脂肪なプレーンヨーグルトは最適。便秘がちな選手にも打ってつけなので、ぜひ慣れて、積極的に取ってほしい食品のひとつだ。

 甘みが欲しい時にはフルーツを入れたり、パン用に置いてあるジャムやはちみつを好みで加えてもいい。また、シリアル類(コーンフレークやミューズリーなど)があれば、これらを入れることで甘みを補える。シリアルは食物繊維を豊富に含むものが多いので、腸の調子を整えるにはありがたいもの。

 どうしても食物繊維が不足しがちな遠征・合宿中に、このヨーグルトがけシリアルは、パンの量を控えてでも取りたい食品のひとつだ。もし、リクエストできるのであればあらかじめホテルにお願いしてもいいだろう。
 また、分包されたチーズ (三角や四角のチーズなど) もオーダーできると、タンパク質、カルシウム源として携帯もしやすく、ありがたいものとなる。

●フルーツ
 柑橘類、バナナ、パイナップル、メロン、いちごなど季節の果物は朝の体のエネルギー補給に欠かせない自然の恵みだ。果物だけでもよくないが、糖分、ミネラル、食物繊維の補給として、面倒くさがらずに、朝、果物を食る習慣を身につけたい。

栄養価からみると、カリウム、糖質、繊維質が豊富なバナナや、ビタミンCの宝庫であるいちごやキウイフルーツ、クエン酸補給に柑橘類がその代表になる。

●飲み物
 オレンジ、グレープフルーツ、トマトのジュースと、牛乳、水、コーヒー、紅茶。
このラインアップが一番ポピュラーだろう。100%のフルーツジュースは、特に果物で柑橘類が取れない時にありがたいが、起き抜けの体にはちょっと甘味や酸味を強く感じる選手もいるかもしれない。水で好みの濃さまで割るというのも手だ。

 コーヒー、紅茶には備えつけのコーヒーホワイトは使わず、添加物がなく脂肪も少ない牛乳を入れたはうがいい。コツはカップに先に牛乳を入れること。こうすると牛乳が室温に戻りやすいが、逆だとコーヒーが冷めやすい。


 どうだろう、工夫次第でバイキングも楽しめるように思えたかな。特に長期滞在の時は、どうしても食事に飽きてくるもの。選手自身が工夫することで、結構楽しく毎朝の栄養補給ができることをもう一度確認してみよう。



【4回裏4/4】  遠征ホテルの食事に浮かれちやいけない。朝食バイキング攻略法

父母へ ■「バイキングのトレーニングを」

 朝食がバイキングだと、面倒くさがる選手がいる。
こういう選手は、朝しっかり食べる習慣がない選手か、すべて食卓が親任せになっているかどちらかだ。自分の茶碗にごはんをよそうことすら初めてだという選手もいる。

選手には日頃から、バイキングの練習をさせてほしい。朝ごはんの時、支度をしすぎないでほしいのだ。
「自分に必要な量は自分でよそう」。これが基本。口は出しても手は出さない。

「そうはいってもやらないからつい手を出してしまう」という親心はよくわかるが、過保護な食卓は選手のためにならない。忙しい朝にいちいちいうのは面倒くさいかもしれないが、これも選手のためと思って厳しい姿勢でのぞんでほしい。


指導者へ ■「周りへの配慮」

 最近は合宿や遠征に大型ホテルを利用するチームも増えてきた。
そのためバイキングになることが多いのだが、その際、周りへの配慮について事前に選手たちと話し合っておく必要がある。

一般の宿泊客からはどうしても煙たがれやすいが、ちょっとした心遣いで、逆にいい印象を持たれることも多いのだ。
騒いだり、ふざけたりしないのはもちろん、まず、時間に余裕のある時には一度に全員で取りにいかず、何人かのグループに分かれて取りにいく。
そして周りに対し「お先にどうぞ」「お先にいただきました」というちょっとした挨拶を心がける。

また、時間に余裕のない時には正確な食事時間を早めにホテルに告げ、協力をお願いすることも忘れずに。
周りから感じのいいチーム」という日で見られることは、選手の大きな自信にもなる。



野球食Top <<< 4回の表 << 4回の裏 >> InningBreak4 >>> 5回の表


Copyright(C) Laurel All rights reserved