野球食 Food for Baseball Players
本ページはベースボールマガジン社発行
海老久美子著「野球食」から抜粋した内容を掲載しています。
【5回裏1/4】  1日3食プラスアルファ。おやつは偉大なる助っ人だ

■野球選手のおやつは補食と考える

前項までの通り、成長期の野球選手はたくさんの栄養素を必要としている。

これだけの食事を3食でしっかり取れればそれに越したことはないが、時間や食べる側の体力など、現実は3食の食事だけでは足りない場合が多い。

 となると、選手のおやつはただただ満腹感を求めるためのものではなく、
3度の食事で足りないものを補う 「補食」 でなくてはならない。

 そのためには脂肪が多く、精製された糖を多く含む 「高カロリーなわりに栄養価の低い」 ジャンクフードはなるべく避けたい。

例えば、ポテトチップス、コーンスナック、チョコレート菓子、揚げ菓子、ジュース、コーヒー牛乳など。これらが好きな選手も多く、中には昼食代わりにしたり、電車の中で食べ続けている選手を見かけたこともあるが、これでは体は作れない。

 野球選手のおやつは、なるべく必要な栄養素を多く含んでいるものを選ぶべきだ。
ポテトチップスよりチーズを、チョコレート菓子よりおにぎりを、コーヒー牛乳よりも普通の牛乳を選んでほしいのだ。



【5回裏2/4】  1日3食プラスアルファ。おやつは偉大なる助っ人だ

■野球選手の補食になるのはこんなもの

では、どんな食べ物が野球選手のおやつとして適しているのか具体的に考えてみよう。

●おにぎり
 手軽に取れるエネルギー源の代表。甘くなく、脂肪もはとんど含まず、満腹感もある。具やのりなどの栄養価も見逃せない。

●のり巻き
高野豆腐、三つ葉、卵など、具のタンパク質、ミネラル、ビタミンが期待できる。
また疲労回復に有効な酢も使っている。

●いなり寿司
油揚げの分、タンパク質を含む。五目のものは具の分、栄養価アップ。

●サンドイッチ
おにぎりなどのごはんものよりは、バター、マヨネーズなど脂肪を多く含むため高カロリー。
ハム、チーズ、卵などのタンパク質、それに野菜が多ければビタミン類の栄養価が期待できるので、菓子パンよりは利用価値は比較にならないほど大きい。
しかも具の相性でいうとおにぎりより野菜をたくさんはさみ込めるメリットがある。できればパンは胚芽、玄米粉が入った、白くないものを。また、具の揚げ物は運動前には適さない。

●パン類
ロールパン、レーズンロール、果糖ロールなどシンプルな食事パンは補食に適している。
間にチーズをはさむなどしても食べやすい。

●中華まん
冬の定番。温かさが消化を助ける。皮は脂肪が少ないでんぶん質。具はタンパク質やミネラルを少しではあるが取ることができる肉まんの他、ピザまん、カレーまんなども同様。

●バナナ
糖質の形が試合前に取るのに適している。カリウムを豊富に含む。食べやすく、持ち歩きやすいのもうれしい。

●柑橘類
疲労回復、エネルギー生成に欠かせないクエン酸、ビタミンCを豊富に含む。
オレンジやはっさくなど、少々皮の厚いものでも面倒くさがらずにしっかり食べたい。 

●カステラ
高糖質食品。消化もよく、運動前の補給に適している。ただし高カロリーなので、必要以上の食べすぎに注意。

●カップヨーグルト
携帯に便利なカップヨーグルトはタンパク質、カルシウムを多く含む。最近は種類も豊富なので、なるべく甘さが少なく、プレーンに近いものがおすすめ。

●角チーズ
忘れられがちだが、手軽に取れる貴重なカルシウム源。スライスチーズも同様。

●牛乳
タンパク質、カルシウム源として一日400、600mlは取りたい。ただし、飲みすぎは乳脂肪の取りすぎにもなるので注意。また、甘みの強いコーヒー牛乳やフルーツ牛乳は牛乳の代わりにはならない。

●100%オレンジ果汁
クエン酸補給に有効。ただし糖分は清涼飲料水と同等に含まれるので、100%だからといって飲みすぎには注意。

●バランス栄養菓子
ここ最近、種類も増え、いろいろ選べるようになった。用途に合わせて取り入れてみてもいい。
何が入っているのか、何から作られているのかチェックを忘れずに。



【5回裏3/4】  1日3食プラスアルファ。おやつは偉大なる助っ人だ

■練習前の捕食の取り方

 運動前の補食のポイントは、まず消化のいい糖質プラス水分を中心に取ること。

 サンドイッチ、おにぎりなどの軽食は運動1〜2時間くらい前までに食べる。
それ以上に時間が迫ってきている時には量を少し減らし、よくかんで食べること。

 バナナ、みかんなどの果物はできれば30分〜1時間前までに取りたい。

 オレンジ果汁は運動中でもOKだが、糖度が高いので、運動直前や運動中は、水や氷で少し薄めたほうがいい。
 いずれにしても消化には個人差があるので、自分なりのおやつの形と量を考えることが大切になる。

■練習後の補食の取り方

 運動後の体は、今まで蓄えていたエネルギーやタンパク質などの栄養素を使って減らしてしまった状態にある。これをいかに早く補充するかが疲労回復のポイントになる。

 運動後なるべく早く、糖質、タンパク質、クエン酸、ビタミン、ミネラル類を補給したい。一番望ましいのは運動後1時間以内に食事を取ることだが、都合により食事の取れない時にはおやつでつなぐことも考えたい。

 運動前が糖質中心の補給に対し、運動後のおやつは糖質源 (果物、おにぎり、パンなど) に加え、チーズ、牛乳、ヨーグルトなどタンパク質を意識した補給を心がけたい。

 ただし、練習後には家に帰って夕食を取るのだから、くれぐれも食べすぎないこと。
目安は350kcalまで。食べ合わせ例を参考に、組み合わせてみてほしい。



【5回裏4/4】  1日3食プラスアルファ。おやつは偉大なる助っ人だ

父母へ ■「補食分の弁当のポイント」

 エネルギー切れを起こしやすい選手の多くは、昼食から練習終了まで何も食べていない場合が多い。12時〜19時過ぎまでとして約7時間。野球をしていなくてもおなかがすいてくる時間だ。

練習前は何かを補給するクセをつけさせたい。でも時間はないからできるだけ小分けになったものが望ましい。一口大のおにぎり、1/4にカットしたサンドイッチ、角チーズ、みかん、バナナ、フチトマト、焼き芋…これらを日替わりで組み合わせて、飲み物と−緒に取るようにさせる。

おにぎりやサンドイッチは、昼食より長く携帯するものなので、腐りやすい具は避けたい。おにぎりなら梅干しやしっかり焼いた塩鮭、焼きたらこ、昆布などを。サンドイッチにはなるべく水分の少ない具がおすすめ。


指導者へ ■「練習効率とエネルギー補給」

 時々「家に帰りたくないのかなぁ」と見える選手がいる。

チーム練習後に個人練習を行なう際、どうも動きが鈍く、練習するでもなくぽーっと時間をつぶしているような選手をよく目にする。

終わったのならさっさと着替えて早くエネルギー補給をしないと、せっかくがんばった練習の効果が半減してしまうのに、と心配になる。

ウェイトトレーニングをする時にも、1セット終わって次のセットまでの時間が長く、その間、周りとしゃべっている選手をよく見る。これも効果半減。
トレーニングは短時間でいかに自分を追い込めるかが勝負のはずだ。

練習時間が長いといわれる野球。必要以上に長くし、エネルギー補給を遅らせているのは、選手とチームのこんな気のゆるみにあるのではないだろうか?



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