本ページはベースボールマガジン社発行
海老久美子著「野球食」から抜粋した内容を掲載しています。 |
【6回表1/4】 |
試合の食事が勝負を分ける。
本番に強くなるためのメニューと食べ方の研究
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試合の日は試合開始時間から逆算して食事時間を決める。午前中に試合の場合、その3時間前にしっかり食事を取る。
野球選手の基本の朝ごはんでいい。でも、野球の場合、試合開始時間が前の試合や天候によって多少ずれることがある。また、球場への移動の都合などでぴったりの時間に食べられないことも多い。
そこで、考え方としては、消化に時間のかかるものはなるべく早めに、試合時間に近づくにつれて、消化のいい、糖質中心のものを食べると覚えてほしい。
例えば、家を出る時 (3時間以上前) には軽めに主食・汁・主菜を食べる。
そして2〜1時間前までに小さめのおにぎり、パン、果物、ヨーグルトなどの消化のよい糖質中心の食べ物を用意して食べる。
また、試合の日は、プレッシャーからいつもより消化吸収能力が落ちている場合が考えられるので、おなかが張ったり、ガス源になる食物繊維が多いものや消化に時間がかかる脂っこいものは避けたほうがいい。また、消化を助けるためにいつも以上によくかんで食べることを心がけることも大切だ。
水分補給がいかに大切であるかについては3回表で紹介したが、その重要性が特に身にしみるのが大事な試合を控えた夏だろう。試合が近づいてきたら、その再確認と準備におこたりのないよう気をつけたい。
まず、ベンチに置くウォータージャグは2個用意しておきたい。ひとつは糖分の入っていない水やお茶などを入れるもの。もうひとつはスポーツドリンク、果汁など糖分入りの飲み物を入れておく。代わる代わる飲んだり、水で割って飲んだりと状況に応じた水分補給のためだ。
さて、そのジャグの衛生管理は大丈夫だろうか? 再度確認しよう。
同時に氷にも気をつけよう。時々アイシング用の氷を、出所が不明のまま飲料にも使っている例を目にして不安になることがある。当たり前のことだが、食べても大丈夫な氷かどうか事前に確認することも忘れないように。
さて、試合中の水分の取り方。暑い日で汗を大量にかきそうな場合は、糖分入りドリンクは薄めに作り(糖分濃度で2.5〜3%軽度に。市販されているスポーツドリンクの平均的糖分濃度は5〜6%なので、水で半分に割るといい)、糖分が水分吸収の妨げにならないようにする。
あるいは、ジャグを2つ用意できれば、糖分入り飲料の濃度はそのまま作っておき、最初は水(お茶) のほうを優先して飲み、途中からスポーツドリンクも飲むようにするといいだろう。
逆に、試合前にしっかり食事が取れなかった時や、運動時間が長引く時は、糖分入り飲料、果汁、ゼリーなどでエネルギー補給をするよう習慣づけるといい。
そして、基本はノドが渇く前に 「ちびちび、ちょこちょこ、うがいをしながら」。
ノドが渇ききってから一度に大量の水を飲むような、タイミングが遅くて胃にばかり水をためてしまう補給の仕方は日頃の練習から避けるようにしたい。
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【6回表2/4】 |
試合の食事が勝負を分ける。
本番に強くなるためのメニューと食べ方の研究
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あらかじめ試合時間が決まっていない野球の場合、試合が昼食時にかかってくることも多く、また、昼食後すぐに試合という場合も考えられるので、昼食は、食べやすくエネルギー源である糖質がしっかり取れ、胃に負担のかからないものがいい。さらに、夏場は食中毒に対する配慮も必要だ。
●主食(糖質源)について
食べやすい炭水化物源の代表はおにぎりだが、長時間携帯することを考えると、特に夏場はその作り方や材料の選び方も注意が必要になってくる。
まず、生ものの具は避ける。梅干し以外の混ぜごはんも避ける。また汁気の多い具もやめておくこと。さらに、手から雑菌が入るのを防ぐためラップなどを使って握り、しっかり冷めてから包むことも大切。
これら厳しい条件下で少しでもおにぎりで栄養強化を、と考えるのであれば、のりを多めに巻く、ふりかけやごまをトッピングするなどが考えられる。
●おかずについて
消化の時間を考えると油脂の多いおかずは望ましくない。しかし、食中毒の予防という面からは調理の時、高温の油で殺菌できる揚げ物はありがたいメニューといえる。
もし、試合日のお弁当のおかずとして揚げ物を入れるのであれば、なるべく衣の少ない唐揚げなどがいい。揚げたあとはよく油を切り、しっかり冷めてから弁当箱に詰めるようにすること。
量はいつもより少なめにし、その分、主食の量を多めにしたはうがいいだろう。また、煮物などのおかずについては十分に汁気を切り、これも完全に冷めてから詰めること。
●サイドメニュー
試合の日のお弁当はどうしても炭水化物源が中心になるため、他の栄養素は不足しがちになる。タンパク質、ビタミン、ミネラルを消化のよい形で少しでも補うためには、果物、チーズ、カップのヨーグルト、果汁などをクーラーボックスに入れるなどして、なるべく冷やした状態で用意しておこう。
また、状況に応じて(疲れて食べにくい時など)はスナックタイプのバランス栄養食、総合ビタミン剤などをうまく利用するのも一案。
●保管について
長時間携帯する昼食についてはその保管の仕方も大切になる。直射日光を避け、風通しのよいところに保管することを心がけたい。
以前、ある高校の選手が冷房の切れたチーム所有のバスの中にお弁当を忘れたことがあった。彼は気づいていたのだが、あとで食べる時に取りにいけばいいと考え、放っておいたという。
いうまでもなく、取りにいった頃にはすでにお弁当は食べられる状態にはなく、代わりのものを買おうにも周りに店はなく、結局チームメイトが少しずつ彼に援助する形になった。
一人の選手のちょっとしたミスが、チーム全体のコンディションを狂わせることになりかねない。選手個々が自分の食事についてしっかり責任を持つことも、大切なコンディショニング・テクニックであることを肝に銘じておいてほしい。
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【6回表3/4】 |
試合の食事が勝負を分ける。本番に強くなるためのメニューと食べ方の研究
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疲労回復という意味では、試合終了後30分から1時間以内に取っておきたいものがある。
一発ものですませたいなら、柑橘系のフルーツヨーグルトを食べる。
多少なりとも時間があるのであれば、牛乳やヨーグルトとオレンジジュースなどの柑橘系ジュース。おなかがすいていたら、チーズパンに柑橘系ジュースでもいい。
帰りも遅くなり、試合終了後1時間以内に食事ができない状況であれば疲労回復を考え、補食を用意することが望ましい。
用意するものの一例としては、おにぎりやパンなどの炭水化物源に、昼食のサイドメニューで紹介したような果物・果汁・乳製品など。
また、これらは移動途中、コンビニエンスストアなどで購入することも可能だが、その際にはある程度買うものを限定し、その意味を考え、補食の意味を理解するきっかけにしよう。
以上、無意識のうちにこれらを自然に取り入れている選手も多いと思うが、なぜこれらを考えることが必要なのか、新入部員を含めて再確認すること。
また、当然のことながら、コンディショニングは食事だけではできない。
食事とともに個々の生活の中でのケアに対する考え方も一緒に確認できれば鬼に金棒といえる。 大切なのは考えることを習慣にすること。
大切な試合の日になってからあわててやろうとしても、うまくいくわけはない。
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【6回表4/4】 |
試合の食事が勝負を分ける。本番に強くなるためのメニューと食べ方の研究
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試合の前の晩の食事といえば、一昔前までは「敵に勝つ」ということで、トンカツとステーキを食へるのが有名だった。
しかし今では、肉と脂肪の取りすぎになり、内臓を疲れさせ、安眠の妨害にもなるということのほうが有名だ。基本は、脂肪の取りすぎに気をつけるだけ。
ごはんがしっかり食べられるいつもと同じものを。体が食べ慣れているものが一番なのだ。
でも、何か「がんばってねJという気持ちを表したいのなら、ちょっと手間をかけた1品をプラスしては? 消化のいい卵料理の代表、茶碗蒸し。夏は冷やしたり、卵豆腐でもいい。
デザートにプリン。ただし生クリームのトッピンクは無用。その他、ごま豆腐、フルーツゼリーや白玉など、油化がよくて低脂肪の一品は前祝いにぴったりだ。
朝一番の試合の時は、選手それぞれの食事時間を把握しておくことが必要だ。
自宅から集合場所までの時間がまちまちであれば、その食事時間にもかなり差が出ているからだ。
集合に時間のかかる選手は、朝、自宅では水分と食事は少しにして、残りの分は集合してから食べるようにするといい。また、試合が昼食時にかかる時には、あらかじめ朝食を早めに取らせるように指示し、昼食が早くても食べやすいようにする。
基本はアップ前に食べておきたいが、アップ後に昼食になるようであれば、おにぎり、あっさりしたサンドイッチ、果物、果汁、ゼリーなどを中心にし、さらに、エネルギー切れを予防するために、試合途中にも果汁や糖質のタブレットを補給できるようにしておくといいだろう。
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