夏は必ず甲子園に行く−−。今春のセンバツ21世紀枠の関東・東京地区代表となった日立一は、夢舞台にはあと一歩届かなかったものの、夏に向けて気持ちを切り替え、歩み始めている。日立一のグラウンドを訪ねた。【松本尚也】
「さあいこう」「よっしゃー」
1月30日午後4時ごろ、学校グラウンドの一番奥にある野球部の練習スペース。
部員19人の威勢の良い掛け声が響き渡る。
すぐ隣ではサッカー部とラグビー部がボールを追いかけている。
ランニングやストレッチ、キャッチボールをこなすと外野手6人は一塁側ファウルゾーンに移動。
高さ3メートルほどのネットを運び込み、ブルーシートをかぶせた。
1人がネットの手前に立ち、奥にいる5人に向かって空高くボールを投げる。
受け手にはシートでボールの出所が見えないため、1歩目の判断が難しい。
「ブラインドボール」と呼ばれる練習方法。練習スペースが内野ほどの広さしかないため、外野ノックはできない。そこで内野手がノックを受ける間、空いているファウルゾーンを使って外野手に必要とされる「1歩目の勘」を養う。
左翼手の小室大海(ひろうみ)選手(2年)は「実際に外野を守っているイメージを持って取り組めば、守備力は上がる」と語る。昨秋の県大会3試合で、外野手の失策はわずか一つだった。
攻撃面でも、内野練習しかできないことを逆に「武器」に変える。通称「インフィールドの野球」。内野をいかに使うかを全員が常に考えながら練習する。
「ピッチャーはそんなに甘い球投げてくれないぞ」「バットを引くタイミングが早い。それじゃ相手をだませない」
中山顕監督(42)は選手たちに次々と注文をつける。バントの構えからヒッティングに切り替える「バスター」の練習。相手の意表を突く「頭脳プレー」の一つだ。「グラウンドが狭く、練習メニューは限られる分、頭で考えてプレーしなければ、強い相手は倒せない」と話す。
他にも、投手が投げた瞬間、ボールがワンバウンドすると分かれば走者がスタートを切る「球道判断」や、守備力と体力を同時に養う「タイヤ引きノック」など、練習方法を工夫している。
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