野球食 Food for Baseball Players
本ページはベースボールマガジン社発行
海老久美子著「野球食」から抜粋した内容を掲載しています。
【5回表1/4】  野球選手の弁当はキレイに飾らなくていい。めざすはパワーランチ!

■毎日の弁当を当たり前に思っていない?

「おべんとおべんと、うれしいなぁ、、何でも食べます、よくかんで〜…」
 幼椎園の時、大の楽しみだった弁当。今はどうだろう? 毎日の弁当、楽しんでるだろうか? あまりに当たり前すぎて飽きちゃってたり、カバンが重くなるから弁当持たずに買って食べてる選手も多いんじゃないかな。

 でも、本気で野球に取り組んで体を作るためには、栄養的にも経済的にも手作りの弁当ほどありがたいものはない。必要不可欠なものといっても過言ではないのだ。
 野球選手として、もう一度弁当を見直そう。

「野球選手としての弁当」を体と頭にたたき込む
 まず、自分の弁当箱を手元に持ってきて、その弁当箱に水をいっぱいになるまで入れてみよう。そして、その水を計量カップに移して水の量を計ってみる。

 どのくらいの水が入ったかな? 1L以上? 以下? よく売っている大きめの弁当箱でだいたい1Lの水が入る。

 高校球児の一食分の弁当箱としては少なくても1L以上、できたら1.2Lは水が入る弁当箱を用意したい。もしそれ以下の弁当箱なら、足りない分を他のケースに入れて持っていこう。

 この1Lの水が入る弁当箱を基準とすると、その半分に主食(ごはんで約350g)、半分におかず。そのおかずの半分に肉・魚・卵などのタンパク質がしっかり取れる主菜のおかずを、残り半分に野菜や海藻、きのこ、豆などの副菜となるおかずを詰める。それにプラスおにぎり1個(1個150g)と乳製品(牛乳やヨーグルト)、そして果物(または果汁100%ジュース)。

 これが練習がある日の弁当の基準量と考えよう。
おにぎりや果物は練習のはじまる前の補食にまわしてもいい。

 この基準を頭において、毎日の昼食をデザインする。何が足りないか? 足りないものをどう補うのか?

 例えば、外食する時、基準の弁当と同じぐらいの主食(ごはん)が食べられたか? 野菜は足りているか? など、自分の体と頭で感じ、考える。そして、ごはんが足りないと思えば、大盛りにする。おにぎりを足す。野菜が足りなければあとで野菜ジュースを飲む。

 こんなふうにして毎日の昼食量をキープするクセをつけるのだ。昼食は朝・夕に比べ、家で食べるのではないだけ、自分にかかる責任が重くなってくる。
面倒くさがって、毎日菓子パンとコーヒー牛乳の昼食で筋肉をつけたいと考えるなんて、とても図々しいことがわかるだろう。
体の材料、タンパク質は足りない、ビタミンCなんて皆無だ。

 でもこれが、考えていない選手の現状。だから、弁当に注目して改善することは、チームメイトに、ライバルに、差をつける最大のチャンスともいえる。



【5回表2/4】  野球選手の弁当はキレイに飾らなくていい。めざすはパワーランチ!

■弁当をパワーアップする秘訣

 弁当を作ってもらっている選手は、まずその環境に感謝しよう。
毎日自分より早く起きて弁当を作ってくれている親を当たり前だと思っていない? 逆を考えてみよう。自分が親より早く起きて、親に毎日弁当を作れるだろうか。そう考えると、どんなに大変なことを毎日やってくれているかがわかると思う。

 たとえ照れくさくても、一度きちんと感謝の気持ちを表すべきなのだ。態度で、そして言葉で。プロの選手が自分の高校時代の話をする時、ほぼ必ずといっていいほど両親や支えてくれた人への感謝の言葉が出てくる。これって聞いていてすごく気持ちがいいし、かっこいいと思う。

 態度では、まず残さず食べること。そして少なくとも自分の弁当箱を洗うこと。弁当の包みも取らずに、放っておくなんて論外。そして、何がおいしかったか、今度はこういうものを入れてほしいとか、弁当への感想と感謝を言葉で表すこと。

 親だって人間だ。感謝されればうれしいし、気が抜けなくなる。こういうちょっとした気配りをするだけで、自然に弁当はパワーアップする。こんなにありがたいことはない。

 でも、中には 「うちの親は忙しくて弁当を作れない」 っていう選手もいるだろう。

同じチームにも、背の高い低い、足の速い遅いがあるように、家庭環境という条件が人によって違うのは当たり前のこと。足がたいして速くないのに、練習して盗塁のテクニックを身につけるのと同じように、作ってくれる人がいないのなら、自分で最大限なんとかするテクニックを身につけよう。実際に自分でなんとかしている選手も全国にはたくさんいる。

 基本は 「持ってこられるものは何でも詰めて持ってくる」だ。

 まず、家の冷蔵庫に何が入っているか、そしてごはんがあるかを把握する。
 例えば、ごはんにふりかけをかけておにぎりにする。プチトマト、笹かまぼこ、ハム、チーズなんかはそのまま持ってこられる。ゆで卵を作るのだってそんなに手間ではない。オーブントースターがあれば、切り身の魚も焼ける。かぼちゃやきのこを焼いてしょうゆをたらしてもおいしいおかずになる。それに梅干し、昆布の佃煮などの常備菜を加えれば結構立派な弁当になる。

 きれいに飾らなくていい。誰かに売るわけじゃないんだから、弁当の形にならなくてもいいのだ。その時に持ってこられるものを持ってくる。足りないものを買い足す。これでいいのだ。

 今日は何が足りないのか。それが瞬時にわかるようになってくればたいしたもの。それを速やかに補えるようになれば、もう弁当に関しては一人前だ。毎日の昼食で腕を磨こう。



【5回表3/4】  野球選手の弁当はキレイに飾らなくていい。めざすはパワーランチ!

■試合の日の弁当、どう食べる?

 さて、試合の時など、時間のない時の昼食はどうするか?
 こんな場合も、日頃からしっかり食べるトレーニングをして食べられる体ならあわてない。

ポイントは5つだ。
@水分を早めにちょこちょこ取っておく。
Aいつもよりしっかりかんで食べ、食べすぎない。
Bいつもよりおかずは少なめに、油ものも少量にして、消化のよい炭水化物中心の食事にする。
Cフルーツや果汁でビタミンCやクエン酸を補う。
D足りないものは試合後に補う。

 要するに、時間のない時は必要度の高さの順に食べたり飲んだりしていく。

時間がないんだから、この場合は残すのもやむを得まい。とにかく、自分の実力をフルに発揮できるように食べる。まさにテクニックだ。日頃しっかり食べられる体力を身につけた体なら、なんてことはない。自分なりの調整方法も体は知っている。日頃の成果を発揮できるチャンスと考えて食べてほしい。

弁当は大切な野球用品。責任を持って管理する

 最後に、忘れちゃいけないことがある。弁当の管理だ。
 夏場になるとよくあるのが、弁当を黒いカバンに入れたまま、直射日光が当たるところに置いたままにして腐らせてしまうこと。中にはこれを食べて食中毒騒ぎになったチームもある。そんなことするわけないと笑っちゃいけない。
この手の食中毒は毎年見事に発生している。試合のことばかり考えながらバスで移動して、車内についうっかりというケースは人ごとではない。

 野球選手にとって弁当や携帯食はグラブやスパイクと同じ、大切なアイテムなのだ。グラブやスパイクを手入れするのと同じように、弁当の管理にも十分気を配ろう。

どこかに置き忘れるのは、プレッシャーと弱気だけでいい。



【5回表4/5】  野球選手の弁当はキレイに飾らなくていい。めざすはパワーランチ!

父母へ ■「食中等への注意」

 弁当で気になるのが食中毒。
特に夏場は注意が必要。食中毒菌繁殖のポイントは温度、水分、Ph(水素イオン濃度)。まず温度。
しっかり加熱が原則。
電子レンジなどで簡単に加熱できる冷凍のおかずが増えているが、加熱が足りないと食中毒菌繁殖の危険性あり。また冷蔵庫は過信しないこと。早めにきちんと加熱したものを弁当にしよう。
そして弁当箱に詰める時は冷ましてからが原則。
次に水分。弁当のおかずは水分を少なくする。水分の多い弁当は食中毒菌に侵されやすいのだ。
煮物は煮きる、和え物や野菜はよく水気を切ること。そしてPh。

夏場のおかずは少し味付けを濃いめに。梅干しをごはんに使う際は、丸ごとよりも、ごはんにまぶすほうが効果的。
ただし梅干し以外の混ぜものや具入りごはんは、傷みやすいので夏場は要注意。


指導者へ ■「弁当持参が原則」

 最近、弁当を持ってこない選手が増えている。
コンビニをはじめいろいろなところで昼食を買えるためだと思う。

が、選手に必要な昼食の量を毎日外で買っていたら、相当な出費になるはずなのだ。そのクレームがこないということは、それだけの昼食を食ペていないということになる。

本文にもあるように、きちんと弁当の形になっていなくても構わない、持ってこられるものは家から持ってくることをチームの原則とすべきだと思う。

またこのくらいの弁当籍で、このくらいの量が必要だということを、一度何かの機会に選手と父母がしっかり理解できる場を作る必要がある。中には一般女子高校生と同じくらいの弁当しか食へていない選手もいるからだ。



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